君も人工衛星・ロケットを作らないか
この記事はTokyo City University Advent Calendar 2025の16日目の記事です
初めまして!私たちは、東京都市大学宇宙科学教育コミュニティ(以下TAC)です。TACは、2019年に設立された団体で学生が主体となってハイブリットロケット1やCubeSat2の開発を行っています。
私たちが現在進めているCubeSat TCU-01 は、インターステラテクノロジズ様のロケット ZERO3に搭載され、2027年に宇宙へ向かいます!
以下の記事では、プロジェクトの概要や各班の役割について改めてご紹介したいと思います。
TCU-01:CubeSat
プロジェクトの概要
- 打ち上げ時期:2027年予定
- 搭載ロケット:ZERO(インターステラテクノロジズ株式会社)
- サイズ:10cm×10cm×10cm(1U)
- 衛星ミッション:打ち上げ後、地球へ向けて姿勢制御を行い、地球の写真を撮影する
ミッションはシンプルですが、実際に作業を進めてみると、とても難しいものです。
次に、各班の概要について紹介します!
構体班…振動・衝撃に耐えるための構造解析と、構体の設計やその修正
3DCADを用いた構造設計
大きな部品として、外側の6面(X,Y,Z各±)と、内部の基板を支えるボード3枚、そしてこれ等を接続したり他センサー類を固定するスペーサーも設計しています。
加工も安くはないので、勿論既製品を活用しつつ、大きな部品(板)はアルミ、小さなスペーサー類はピーク材を切削加工する方針です。
使用している3DCADは東京都市大学の学生ならタダで使うことのできるAutodesk Fusion4を使っています。
他班が決定した使用機器類を3Dデータに反映させ、視覚的に分かりやすいモデルを作りながらそれらの配置を検討します。
打ち上げ環境(加速度・振動)に対する構造解析
ロケットで打ち上げられる時、衛星はガタガタと揺らされます。これに耐えられるのかをコンピュータ上でのシミュレーションを行って検討します。

解析を元に設計の修正
先述の構造解析や他班からの意見等により、構造的に危険な箇所を見つけ、これを修正します。打ち上げ時に構体が耐えられるよう、検討に検討を重ねます。
また他班がセンサーやその配置を変更する時も、既存の構体の設計を修正して対応します。
加工依頼
今回は構体の加工は外注で行います。加工会社とのミーティングを行い、加工の面からも設計に対して意見を貰い、状況に応じて更に設計を修正します。
組立
加工ができたら、組立です。3DCADでは内部の基板やセンサ類も配置した3Dモデルがありますが、どうしても配線類の検討はCAD上でも困難です。従って、実際に組み立ててみることにより配線の配置を検討します。
組み立てて初めて気付くことができる欠陥もあるやもしれません。よって、更にこの後にも背系の修正と加工を行います。
振動試験・真空試験
打上や宇宙環境に耐えられるのか、シミュレーションだけでは飽き足らず実物でも試験を行います。学外の施設を用いて試験をやることも。
設計修正
ここまでに出た既存の構体の問題を解決しにかかります。
上記の試験類はEM(Engineering Model)という試験用の構体を用いて行います。この子は宇宙には飛ばさせません。
更なる修正の反映をFM(Flight Model)に行い、この子に宇宙へ行ってもらいます。
電気通信班…衛星の電子回路、通信系、ソフトウェアなど
仕様書の作成と設計確認
使用する電子部品や電気機械について、仕様や性能をまとめた一覧表を作成しています。仕様書をもとに、電力収支の計算を行うなどに用いつつ、班員全体の学習の一環として行っています。
電力設計とソーラーパネルの発電テスト
衛星は備え付けのバッテリーとソーラーパネルで発電の限られた電力で動作します。そのため、ソーラーパネルによる発電テストを行い、実際にどの程度の電力が得られるのかを確認し、磁気トルカなどの部品の消費電力の検討に活用されます。
各機器の電力消費調査
マイコンや各種センサーなどについて、どれくらい電力を消費するかを調べています。これらの結果は、電力収支の計算や姿勢制御に必要な、磁気トルカの検討に活用されます。

省電力運用の検討
限られた電力を有効に使うため、機器をいつ動かし、いつ休ませるかといったオン・オフ時間の検討を行っています。実際の運用を想定しながら、無駄な電力消費を減らす工夫を検討しています。
実機を用いた電気試験
最終的には、実際の機体であるTCU-01を用いて電気・通信のテストを行います。これにより、信頼性の高い衛星の完成を目指しています。
姿勢制御班…宇宙空間での姿勢制御を行うためのプログラムなど
はじめに
こんにちは。私たちはTCU-01の姿勢を調べるチームです。
宇宙で衛星がどちらを向いているかを正確に知るために、「姿勢推定プログラム」を開発しています。
姿勢を知るとは?
「姿勢を知る」とは、宇宙の中で衛星がどの方向を向いているかを計算することです。
そのために、宇宙の中での基準となる方向と、衛星の中で観測した方向を比べます。
この2つの向きの関係を数式で表したものを「姿勢行列」と呼びます。

2つの基準で向きを決める
衛星は自分の向きを知るために、
・太陽の方向
・地球の磁場の方向
という2つの「目印」を使います。
それぞれについて、
・計算で求めた理論的な方向(宇宙基準)
・センサーで観測した実際の方向(衛星基準)
を比べることで、衛星の向きがわかります。

太陽の方向を調べる
TCU-01では、自作の太陽位置計算プログラムを使い、GNSS(GPSと同じしくみ)で得た位置と時刻から太陽の理論的な方向を計算します。
また、1024個の小さな目で太陽の温度を観測し、光の中心を計算することで「実際に見えている太陽の方向」を測定します。
地球の磁場を調べる
地球のまわりには磁場(地磁気)があり、場所によって向きが少しずつ異なります。
衛星では、世界中の科学者が協力してまとめた磁場の地図を使って「理論的な磁場の向き」を計算し、磁場センサーで「実際の磁場の方向」を観測しています。
姿勢を求めるしくみ
「太陽の方向」と「磁場の方向」という2つの基準をもとに、計算で求めた理論値と観測した実測値を照らし合わせて、衛星の向きを求めます。
このしくみが、TCU-01が宇宙でどちらを向いているかを知る“目”となっています。
まとめ
姿勢を知るとは、「基準方向」と「観測方向」を比べること
座標変換は「別の見方で表し直す」こと
太陽と磁場という2つの基準を使って、TCU-01は自分の向きを判断しています。
MUSASHI-01:ハイブリットロケット
TACでは人工衛星だけでなく、学生によるロケット開発にも取り組んでいます。
現在は計画を大幅に延期しているものの、ロケットの製作・打ち上げ時の地上支援装置の開発にも挑戦中です。
人工衛星とロケットの両面から宇宙を目指すことを目標に活動を行っています。
ハイブリットロケットとは
ロケットが飛んでいくニュースとか見ていると、「固体燃料」とか「液体燃料」とか聞きますよね?
ハイブリットロケットとは、固体と液体を両方使って飛ぶロケットです。
現在TACで開発中のロケットは、固体燃焼にプラスチック(ABS)、液体酸化剤に亜酸化窒素(笑気ガス)を用いて、これらを燃焼させて飛ばします。
全長約1500mm、直径100mm、到達目標高度200mで、パラシュートによる減速落下を予定しています。
構造班
ロケットのボディやその継ぎ目、ノーズコーン(先端)などなど、ロケットを構成するメインとなる部品達の設計・加工を行います。
またエンジンの推力に部品が耐えられるか、構造解析を行って検討します。

電装班
ロケットに搭載する基板にセンサ類、記憶媒体の設計を行います。
ロケットの加速度、角加速度、大気圧、GPSによる位置情報などを計測し、これを記録したり地上に通信したりする電装を作ります。
基板はKiCadで自ら設計しています。

燃焼班
ロケットのエンジン担当です。
現在は打上時の地上支援装置(GSE)の開発を行っています。
いずれは燃焼試験を行い、エンジンの性能と発射シーケンスを確認する予定です。
空力班
ロケットの飛行シミュレーションを行います。何の想定も無いまま打ち上げてしまえば、無誘導ミサイルと変わりません。
安全を確保するため、パラシュート展開の是非ごとにパターン分けして落下予測地点の予測を行います。
またフィンの効果や設計の担当でもあります。
解析には東京都市大学のライセンスで学生ならタダで使えるMATLAB5を使います。
おわりに
この記事を通して、TACのハイブリットロケットやCubeSatの開発に興味を持ってもらえたら嬉しいです。この記事を書く人も足りないぐらい人がいないのでもし活動に興味があれば、見学・加入などお待ちしています!
質問6も大歓迎です✨

