研究内容
当研究室では、電気化学と界面化学、無機化学、生化学の知識を組み合わせて、バイオセンシングデバイスやエネルギー変換デバイス等の電気化学デバイスに係わる研究開発を進めています。具体的には、ナノシートをはじめとするナノ材料を最大限利活用する技術を開発し、それを生体分子センサや感染症ウイルス/幹細胞プロファイリングに応用する研究や、ナノ材料の界面電極反応解析に関する研究に取り組んでいます。
主な研究テーマ
1.生体分子センサ
2.感染症ウイルス/幹細胞プロファイリング
3.有機物の高付加価値変換と高効率水素製造
1.生体分子センサ
優れた化学的安定性や電気化学的特性を有するナノ粒子やナノシート等のナノ材料は、電気化学デバイスの基幹材料として広く応用されています。当研究室では、様々なナノ材料表面に対して生物由来材料を固定化することで、タンパク質等のバイオマーカーや核酸配列等の情報を直接検出できる分析手法を開発しています。例えば、電気泳動堆積と凍結乾燥を組み合わせてナノシートの垂直配向多孔質電極(図1)を作製し、電気化学反応と生体分子間反応の反応活性を最大化することで、検出感度を大幅に向上できます。また、電気化学活性の高い金属のナノ構造体を所望の形状で電極上に形成すること(図2)で、小分子測定における検出感度を向上できます。
図1 ナノシートを用いた垂直配向多孔質電極(Biosensors and Bioelectronics, 2024参照)
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図2 層状化合物に電位を印加することで得られる酸化銅ナノ構造体(ACS Applied Nano Materials, 2025参照)
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2.感染症ウイルス/幹細胞プロファイリング
ウイルス感染や幹細胞の分化には、細胞表面に存在する糖鎖が重要な役割を果たしています。例えば、鳥インフルエンザウイルスは本来、鳥型受容体糖鎖のみを認識しますが、変異によってヒト型受容体糖鎖を認識できるようになると、世界的流行(パンデミック)を引き起こす可能性があります(図3)。また、ヒトiPS細胞には未分化状態に特徴的な糖タンパク質(タンパク質に糖鎖が結合した分子)が存在し、腫瘍化の原因となる未分化細胞の残存を検出する指標として注目されています。
現在、ウイルスの検出にはPCR検査やイムノクロマト法、iPS細胞の安全性評価にはPCR検査や蛍光活性化細胞選別法(FACS)が利用されています。しかし、これらの手法は高感度である一方で測定に時間を要する、あるいは迅速であっても感度が十分でないといった課題があります。
当研究室では、高感度かつ迅速な測定が可能な半導体バイオセンサに着目し、ウイルスやiPS細胞関連物質と特異的に相互作用する糖鎖をセンサ表面に固定化した機能性界面を開発しました。この技術により、パンデミック発生リスクの予測やiPS細胞の臨床応用における安全性向上に貢献できる可能性を示しています。
図3 鳥インフルエンザウイルスの突然変異と糖鎖認識能の変化(Scientific Reports, 2019参照)
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3.有機物の高付加価値変換と高効率水素製造
バイオ燃料や合成燃料、水素等の次世代燃料を最大限利用するための技術が注目されています。今後の更なる普及には、次世代燃料のコスト低減を実現することが重要で、原料コストを下げることや製造プロセスで得られる有機物を高付加価値化して有効利用することで産業全体の収益性向上に大きく貢献できます。また、水素製造の低コスト化は省エネや脱炭素化に貢献すると期待されます。当研究室では、これまで培ってきたナノシート多孔質化技術を活用し多孔質酸化物電極を作製し、電極反応を高効率化し、有機物の高付加価値転換の効率および水電解の効率を向上させるための技術開発を進めています。




