研究内容

当研究室では、界面化学と電気化学、生化学、無機化学の知識を組み合わせて、バイオセンシングデバイスに係わる研究開発を進めています。具体的には、デバイス界面において分子認識機能を最大限利活用することで、生体分子センサ、感染症ウイルス/幹細胞プロファイリング、ナノ材料の界面電極反応解析についての研究に取り組んでいます。


生体分子センサ

優れた化学的安定性や電気化学的特性を有するナノ粒子やナノシート等のナノ材料は、電気化学デバイスの基幹材料として広く応用されています。様々なナノ材料表面に対して生物由来材料を固定化することで、タンパク質等のバイオマーカーや核酸配列等の情報を直接検出できる分析手法を開発しています。例えば、ナノシートを用いた垂直配向多孔質電極を作製し、電気化学反応と生体分子間反応の反応活性を最大化することで、検出感度を大幅に向上できます。また、電気化学活性の高い金属のナノ構造体を所望の形状で電極上に形成することで、ナノスケールでの測定において検出感度が大幅に向上すると期待されます。

感染症ウイルス/幹細胞プロファイリング

ウイルス感染や幹細胞分化には細胞表面に存在する糖鎖が深く関係しています。例えば、インフルエンザは鳥型受容体糖鎖のみを認識する鳥インフルエンザウイルスがヒト型受容体糖鎖を認識するようになると世界的大流行(パンデミック)となると言われています。また、ヒトiPS 細胞は未分化状態の細胞表面に特徴的な糖タンパク質(タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)を有しており、腫瘍化の恐れがある未分化細胞の残存マーカーとして有用であると考えられています。これらの糖鎖構造との相互作用を解析できる機能性界面をつくり、それをバイオセンシング技術に応用できれば、パンデミックの予測やiPS細胞の臨床応用の安全性向上に役立つと考えられます。

半導体バイオセンサ

電界効果トランジスタ(field effect transistor; FET)バイオセンサは、半導体素子であるトランジスタのゲート端子を認識・検出場とし、その表面に吸着される検出対象物質の電荷を検出するバイオセンサです。同センサは半導体微細加工技術によりセンサの小型集積化が可能であり、またゲートに固定化する分子を変えるだけでセンサ自体を改めて設計し直す必要もなく様々な用途に適用が可能となります。これまで、抗体や糖鎖、有機化合物等をセンサ界面に固定化することで機能化し、感染症やアレルギー、重篤疾患(がん)、精神神経疾患等の関連物質の検出を試みてきました。